Women in Abstraction: Landscape

Women in Abstraction: Landscape

伊藤美緒 太田桃香 末松由華利

2025. 10. 18 - 11. 15

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Women in Abstraction: Landscape

アーティスト
伊藤美緒 太田桃香 末松由華利

会期
2025年10月18日(土)~11月15日(土)

開廊時間
11:00 – 19:00
最終日11:00 – 17:00

休廊日
日曜祝日休廊

会場
Gallery Hayashi

オープニングレセプション
2025年10月18日(土) 18:00 – 20:00

 

GALLERY HAYASHI + ART BRIDGEはこの度、グループ展「Women in Abstraction: Landscape」を開催いたします。本展示は抽象絵画を制作する女性アーティストに焦点を当てたもので、第二回目となる今回は、風景(Landscape)をサブテーマに、伊藤美緒、太田桃香、末松由華利の三名の作品を発表いたします。展覧会は2025年10月18日(土)から11月15日(土)まで開催されます。

近年、世界的な美術の潮流として、女性作家たちの抽象表現が再評価され、その位置づけが問い直されています。本展示はこうした流れを受け、現代の日本の女性抽象表現作家の活動に目を向ける「Women in Abstraction」の第二回目となります。第一回が抽象絵画というジャンルそのものの多様性と自由をテーマとしたのに対し、本展ではそこに風景という普遍的なモチーフを取り入れました。風景画は歴史的に、客観的な外界の描写を求められてきました。しかし、抽象絵画が探求する風景は、そこに作家の内省的な意識や記憶、自己と他者との関わりが投影されてきました。本展に参加する三名の作家は、それぞれ異なる手法でこの主題に挑み、抽象画における風景の新たな可能性を提示します。

伊藤美緒は、刻々と変化する景色や、ある一瞬の印象を作品に落とし込もうと試みます。景色はいずれ変わっていくものですが、絵画はそれを留めておき、いつでも思い出せるような装置としての役割があると考えます。伊藤の作品は、色のレイヤーを幾重にも重ね合わせ、それを意図的に削り取ったり拭ったりすることで下層の色彩や質感を浮き上がらせるプロセスを特徴とします。「描く」と「消す」の繰り返しにより画面上に浮かび上がる過去の筆致や色彩は、時間的な奥行きを表し、伊藤が目にしたある一瞬の風景が、それに至るまでの経緯を鑑賞者に想起させます。

太田桃香は、日常的に目にする山を制作のテーマとしています。制作に用いる油絵具の重厚な物質感を活かし、山から感じられる圧倒的な存在感を画面に表現します。それは、ただ山の輪郭をなぞるのではなく、山が内包する空気感と、今自分がいる季節の気温や風を捉えようとする姿勢を示します。太田の作品からは、見たままの風景を超えて、そこに潜む木々や人々の営みまでも想像させる力強さを備えています。

自然や街の風景をモチーフの一つとする末松由華利は、アクリル絵の具ならではのにじみやぼかしの技法を用いて抽象絵画を制作します。この、アクリル絵の具をキャンバスにしみ込ませていく技法は、カラーフィールド・ペインティングにおいて、色そのものの存在を追求したモーリス・ルイスや、女性作家でステイニング技法の先駆者であるヘレン・フランケンサーラーに通じ、かつ彼女の構図には余白を活かした日本画的な美意識が垣間見えます。こうして作られた作品を通じて末松は、鑑賞者自身が、他者と、社会と、時代と向き合う、体験的な空間を生み出すことを目指しています。

「Women in Abstraction: Landscape」では、風景という共通の主題を通じて、伊藤美緒、太田桃香、末松由華利がそれぞれの視点と技法で抽象絵画の可能性を広げています。現代を生きる彼女らによる、繊細かつ力強い感性で描かれる風景をぜひご高覧ください。

 

作家プロフィール

Orange, 2025, Oil on canvas, H350 × W270 mm

伊藤美緒

1995年鳥取県生まれ。作品制作と自然の時間の流れに親和性を感じ、自然が作り出す美しい情景のワンシーンに起こる偶然性と、描くストロークのバランスの偶然性をリンクさせて作品を制作する。
伊藤は2017年武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。2019年武蔵野大学大学院修士課程油絵コース修了。GALLERY HAYASHI + ART BRIDGE(東京)、児玉画廊(東京)、CLEAR GALLERY(東京)、BLANKgallery(上海)、KATSUYA SUSUKI GALLERY(東京)、東葛西A倉庫(東京)、LOOP HOLE(東京)、tatabookshop and gallery(東京)などで展示を行う。現在は東京を拠点に活動する。
本展示は、個展「くもの巣に、ひっかかった花びらは綺麗だからとゆるされてほしい」(2024年6月5日~6月22日)、グループ展「DELTA South」(2025年9月26日~9月29日)に続き、弊ギャラリーから三回目の発表となる。

 

夢(朝方に見る), 2025, Oil on canvas, H910 × W727 mm

太田桃香

1997年静岡県生まれ。美術史の中でもモチーフとして多く描かれてきた山をはじめに、彼女自身の生活や日常を題材として作品制作を行う。山と自身の制作活動に親和性を抱き画面に向き合うことで、山や日常に在る情景を描くと同時に彼女自身の生活を表現している。
太田は、2020年京都造形芸術大学(現 京都芸術大学)美術工芸学科油画コース卒業。2022年愛知県立芸術大学大学院美術研究科(博士前期)美術専攻油画・版画領域修了。GALLERY HAYASHI + ART BRIDGE(東京)、Kaikai Kiki Gallery(東京)、GASBON METABOLISM (山梨)、 日本橋三越(東京)、ARTISTS’ FAIR KYOTO 2021、現在は茨城を拠点に活動する。
本展示は、グループ展「Abstracting The Reality」(2023年4月7日〜4月23日)、「WHAT CAFE EXHIBITION vol. 24」(2023年2月15日〜2月26日)に続き、弊ギャラリーから三回目の発表となる。

 

Lives Unseen, 2025, Acrylic on canvas, H1167 × W910 mm

末松由華利

1987年埼玉県生まれ。2010年多摩美術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。現在は東京を拠点に活動する。
2017年「シェル美術2017」にて「島敦彦審査員賞」を受賞。2019年 東京オペラシティアートギャラリーにおいて、若手作家の紹介を行うシリーズ展「Project N」に選出され、同館で個展を開催。2020年、第33回ホルベイン・スカラシップ奨学生として佐藤美術館で開催された成果発表展に参加。2022年、フィンランドArteles Creative Centerで開催されたアーティスト・イン・レジデンスへ招致作家として参加した。個人や社会が持つ両極性をテーマに活動する彼女は、自身の手記を基に、テーマの選定、タイトルの推敲、そして無数の下絵とドローイングを経て、個人的かつ具体的な体験や疑問を、抽象化・象徴化することで作品を創り出す。取り扱う主題や題材を、この世に生きる誰もが出会う人生の諸局面へと変換し、描出することで、作品を通じた他者との対話を指向している。さらに近年はテキスタイルメーカーとのコラボレーション商品が発表されたり、百貨店の全国プロモーションで作品がキービジュアルに起用されたりと、意欲的に表現と活動の幅を広げている。
本展示は、グループ展「On Paper: Art and Print Market」(2025年5月3日〜5月6日)に続き、弊ギャラリーから二回目の発表となる。