In Different Ways
作家
堂本尚郎 ムティアラ・リスワリ 奥天昌樹 小野久留美 高野萌美
会期
2023年7月7日(金)~7月23日(日) 期間中終日開催
時間
11:00 – 19:00
7/7 11:00 – 20:00 (17時からレセプション)
7/23 11:00 – 17:00
会場
Gallery Hayashi
GALLERY HAYASHI+ART BRIDGEはグループ展「In Different Ways」を開催いたします。
本展では堂本尚郎、Mutiara Riswari(ムティアラ リスワリ)、奥天昌樹、小野久留美、高野萌美による平面作品をご紹介いたします。
戦後日本の抽象表現を牽引した堂本尚郎から現在を生きる作家4名が並ぶ本展は、作家達がどの様に作品制作に向き合い、独自の表現方法を生み出してきたかを歴史を感じながら見ることができます。
ペイント、エアブラシ、刺繍、さらには写真を土に埋めたり、様々な素材をコラージュしたり、画面上のレイヤーを再構築したりと歴史を踏襲しながらも、新たな表現に昇華させてきたかに焦点を当てています。それぞれの作品は美術史の流れに基づいていると同時に、21世紀における様々な媒体の新しい可能性と解釈も見据えてます。
堂本尚郎は伯父の堂本印象をはじめ、多くの芸術家を輩出した名門一族のもと、1928年京都に生まれ、23歳で日展特選を受賞するなど華々しいデビューを飾りました。1952年、印象に随行してヨーロッパを周遊したことがきっかけにフランス留学を決意、55年単身パリへ渡り、日本画から油彩画へと転じました。56年にミシェル・タピエやサム・フランシスなどと知り合い、アンフォルメルの活動を行いました。1957年にはスタッドラーギャラリーで初個展を開催、その後パリやニューヨークを拠点に独自の物質感を強く感じさせる表現を展開し、国際展でも評価を受けました。
Mutiara Riswariは1998年スマラン生まれ。2019年にIndonesia Institute of the Arts Yogyakarta (国立芸術院ジョグジャカルタ校) ファインアート卒業。クリスチャンの中国人の父、ムスリムのインドネシア人の母という背景から彼女の作品は書や水墨画と言った東洋の造形伝統を色濃く感じさせると同時に、インドネシアが長年抱えてきた抑圧からの解放が読み取れます。現代美術史の一部であるインドネシア・ニュー・アート・ムーブメントが謡う「解放の美学」を、インドネシアではアートコレクティブが時代精神やその改革の実践としての役割を果たしてきたように、彼女は視覚芸術で表現しています。主な展示にEyes Wide Open’ White Space Art Asia, Singapore や”Offbeat” Yogya Art Lab by Gajah Galleryなどがあり、ASEAN collectionsにも収蔵されています。
奥天昌樹は1985年神奈川県生まれ。武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻修了。美術史におけるコンテクストを排除した普遍的な美を探求し、5歳未満の児童が無意識に描いた抽象的な線を取り入れた作品を制作しています。アクリル絵具と油絵具を併用し、絵画の積層構造をテーマに制作された厚みのある絵の具や薄い層の中にある微細なレイヤーと、抽象的な線を模ったマスキングテープの層のやりとりは彼が制作の際に行ってきた一手一手の構成を顧みて鑑賞者が再考し積層構造を 追体験できるように仕向けています。
小野久留美は1995年栃木県生まれ。ロンドン芸術⼤学セントラル・セント・マーチンズ ファインアート卒業。自然の摂理である「変化」と、物事を永遠に留めておきたいという人間の「保存」に対する渇望の可視化に興味を持ち「写真を土に埋める」という方法で作品を制作をしています。「紙に印刷された写真を⼟に埋める」という⼿法を介すことで、⼟中の⽔分と菌類によってその姿を変えて行きます。そして掘り起こされた写真からは無常に抗う保存への憧憬が感じられます。小野の作品には、自らの独創的な思考に基づいた、郷愁的世界が広がります。小野にとって写真とは保存するための外部記憶装置であり、写真を土に埋める小野の技法は、全ての物質的存在はいずれ大地に還るという真理と、人類の「不変性」「永遠」への願望のありさまを可視化し、大地から掘り起こした作品には「美」に対する瞬時の恩寵が現れてきます。本展示では「自然による分解」に加えて「人間の手による分解」に着目し、埋めた写真を再度、彼女の手でばらばらにし、メタモルフォーゼを繰り返す蚕からとったシルク糸で縫い合わせ再構築したコラージュ作品が並びます。
高野萌美は1993年神奈川県生まれ。ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ ファインアート卒業。人類史を長らく近くで支えてきた布(テキスタイル)を出発点にそれらが抱える社会・文化的背景と美術史が混交する地点を模索した作品を制作しています。国内外の様々な地域に滞在し、その土地独自の染織の技法を観察、また自らの手を動かし時間をかけて解釈することで得た文化的背景の精神的な気づきを、日常生活で感じる想いと重ねて作品として残しています。身体的労力を要する手作業による表現は、簡略化、迅速化、均一化へ向かう近年の社会への静かな抵抗であるとも言えます。本展示では布というメディアがもつ詩的・空間的可能性のさらなる拡張を目指し、近年作家が多用してきた木製パネルやフレームなどの支持体に依らず制作された新たな作品を発表します。
Installation View
Photo: Len Ishimaru